次年度の予算で心電計を購入予定であったが、三栄メディシス社のPC心電計の存在を知り、また、モニター価格とかなりリーズナブルなこともあり、「ECG Explorer 500」計2台を今年度中に導入した。
1台は当初の予定通り生理機能検査室に配置し、もう1台は循環器内科外来での使用を検討した。忙しい外来診療の中で、通常の心電図検査を行うことが不可能であることは容易に想像がつく。そこで外来ならではメリットを生かし、特に患者さん自身が病気について知り、理解を深め、治療に役立てられる様な形での運用を模索した。
最初に考えたのは、ご本人の心電図波形をリアルタイムに見せることが出来るかどうかである。患者さんが自身の心電図をリアルタイムで見る機会はほとんどなく、もしあったとしても、モニター心電図計の1本のリズム波形を横目に見るのが関の山である。そして、普段の診療では12誘導で説明するため、最低でも複数の波形をリアルタイムに見せる必要があると考えた。
外来診察室での記録となると、椅子に腰かけた状態での記録となるが、四肢誘導(6波形)を記録することは比較的容易である。ただし、筋電図などのノイズが混入するため、その除去が必要となるが、「ECG Explorer 500」標準のフィルタを適宜使用すればP波の同定も可能であることが判明した。
上記検討結果を踏まえ、まずは、発作性あるいは持続性心房細動で、定期的に外来通院中の方を対象に四肢の心電図記録を行ってみた。
物珍しさもあってか、今の所全員がご自身の心電図波形に興味を示してくれている。波形の意味を理解してもらうのは難しいが、治療の必要性・重要性は以前よりも伝わっていると思われる。また、横になり服を脱いだりする必要がないため、患者さんには好評で、12誘導心電図と比べるとお財布にも優しいようである。
ところで、生理機能検査室に配置したもう1台のPC心電計に関しても、若干の工夫をしているので参考までに記しておく。
本体を接続したノートパソコンは常時電源を入れた状態にはないため、初期設定ではPCの電源を入れてからソフトが立ち上がるまで時間がかかった。解決策としてハードディスクをSSDという起動の早いタイプに変更し、スリープ状態からの復帰とすることで、今までの心電計とほぼ同じ時間での起動が可能となった。
また、デスクトップ画面を直感的に操作できるようMac風にアレンジした。初めてで慣れていない人でも戸惑うことなく記録が出来るようで、職員のストレス軽減に役立っている。
なお、印刷は院内既存のオーダリングシステムで使用しているモノクロレーザープリンタにUSB接続し、連続で長時間の取り込みを行ったときなどは、異常波形のみを選択し印刷している。紙が無駄にならないのも、院内で実施しているエコ活動に貢献できている。
初めてPC心電図計を使用し、想像以上のポテンシャルがあることはわかったが、一方で改良して欲しい点もあり、幾つか挙げてみた。
●プリント画面のレイアウト変更
見慣れた現状のレイアウトと同じ方が以前との比較が容易である。
●波形の時系列表示 (※2012年12月発売開始のオプションソフト「心電図Viewer」にて可能となりました。)
治療の効果判定に有用で、患者さんも理解しやすい。
●本体の無線化 (※2013年8月発売開始のEcg Explorer 500X2ではワイヤレス接続が可能です。)
12誘導波形を見ながら安全に運動負荷テストが行える。
以上、PC心電計「ECG Explorer 500」を外来診療で使用してみた感想は、心房細動などの不整脈管理においても充分に役立つツールであることは間違いないようである。
COMMENT
鈴木院長は、三島中央病院の循環器内科の部長(現 つたえ内科クリニック院長)としてご活躍されています。鈴木院長にはデモをさせて頂いた時からたくさんのアドバイスなどを頂きまして、とても感謝しております。
三島中央病院の循環器内科では、狭心症に代表される虚血性心疾患、不整脈、弁膜症などを中心に、病気の発症予防に積極的に取り組まれています。その中で、初期診断としての心電図の役割はとても重要です。心電図波形の異常を捉えるためには、波形を正確に描画できるということが非常に重要となってきます。
「ECG Explorer 500」は、パソコンのディスプレイである高解像度の画面に心電図波形を非常に綺麗に描画しますので、心電図波形の小さな異常を捉えることが可能です。
先生方の日々の診断にお役立ちできるのではないかと思います。
鈴木院長よりご指摘いただいたご要望に関してましては、是非検討させて頂きますので、少々お待ちください。
今後ともご指導のほど宜しくお願い致します。